January 29, 2010

「よい住まい:#1歩きまわれること」

設計を担当した住宅ではオーナー様から
「家にいることが多くなり外出する機会がへりました」という感想を
よくいただきます。
それは家の居心地がよいということだと理解しています。
よい住まいについて考えていくシリーズの記念すべき第一回目です。
まずは私がもっとも大切だと思うポイントをあげてみます。
それは「歩きまわれること」です。
単に広い部屋の中を歩きまわるということではありません。
空間(室)に二つ以上の出入口があるということです。
これまで住まいの規模として豪邸とよばれるような大きなものから
狭小とよばれる小さなものまで設計を経験しましたが、
小さくても歩きまわれる住まいは外にいるような広がりを感じることができ、
一日中家にいても閉塞感や圧迫感を感じることがありません。
逆に大きな家でも出入口が一つしかない行き止まり空間には閉塞感があります。
でも歩きまわることができるとはどういうことでしょうか?
ヒントは室内風景にあります。

まわれる02.jpg 例をあげてみます。
まず寝室と廊下、洗面室という3つの空間があると仮定します。
出入口がひとつの場合は廊下と寝室、廊下と洗面室がそれぞれドアでつながり、
寝室と洗面室は廊下を通らない限り行き来することができません。
この場合の室内風景は、寝室?廊下?洗面室という接続の1通りです。
出入口がふたつの場合は廊下と寝室、洗面室がそれぞれドアでつながり、
さらに寝室と洗面室もドアでつながっています。
この場合の室内風景は、寝室?廊下?洗面室と寝室?洗面室?廊下という
接続の2通りとなります。
さらに部屋(室)数やドア数が増えると接続の組み合わせは増えていきます。

移動する経路の選択によって室内風景の組み合わせ数が増え、空間体験として
家の物理的な規模よりも大きな広がりを感じます。
この特徴を利用すると家という限られた面積の空間に実面積以上の空間を
つくることができます。
こういう家では子供達がつねに楽しそうに家の中で遊んでいます。
すべての室では無理な場合もありますが、ひとつの室でも広がりが生まれるので
住まいを検討している方は、考えてみることをおすすめします。