April 23, 2010

「よい住まい:#4 バランス感覚」

住まいの設計では「バランス感覚」をもつことがとても重要です。
それはクライアントである建主と設計者の両者に必要なものだと思います。
その理由は住宅ができるまでの過程を考えてみるとよくわかります。
竣工するまでにはたくさんの事項・要素について決定をしなくてはならないですが
決定の際にひとつの事項に固執してしまうとバランスの悪い家ができあがります。

かいぎ.jpg 極端な例をあげてみます。

・ケース1は性能にこだわりのあるオーナー様です:
家の断熱性能や遮音性能、耐震、気密・・・の性能評価を高くすることに熱心で
他の部分はそれほど関心がない方です。
完成した家は高い性能を有していますがデザインがチグハグで雰囲気がよくない。
近年は環境に配慮した商品が開発され情報をカタログ等でみることができます。
それらを鵜呑みにして判断していくとオーバースペックとなることもありますし
性能重視の製品はやぼったいデザインが多いのでイメージが悪くなりがちです。

・ケース2はデザイン重視のオーナー様です:
写真集や専門誌で見たような家がほしい・・とデザインイメージ先行の方です。
完成した家は写真栄えのする美しいデザインですが日常生活で不便なことも多く
故障やメンテナンスも各部分で必要になってしまいました。
優れたデザインのためには不便でもかまわないという人も実際いらっしゃるので
単純には良し悪しを判断することはできませんが、大変そうです。

・ケース3はコスト重視のオーナー様です:
とにかく安くしてくれればいいという判断です、当然デザインは求めていないので
家の中にさまざまな建材が建材展示場のように無秩序にばらばらと並びます。
また商品を直接購入して施工者に支給という形で多くの材料を入手したため
数年後、材料の不具合が発生したときには施工者のメンテナンスは非対応で
オーナー自ら材料を入手して施工を業者にお願いすることになりました。
これも極端な例ですが長く生活をする場が展示場のようでは寂しいですし
オーナー自身が補修の段取りや手配を行うのも厳しい気がします。

極端な例を3つあげました。
程度の差はあれ家をつくろうとする際にはどの要素も必ず検討することになります。
例にあげたようにひとつの要素に固執して全体のバランスが悪いと
よい住まいとは異なるものになっていくことが想像できると思います。
理解しているつもりでも、いざ設計打合せを進めると特定要素に目がいきがちです。
やはり建主と設計者でよく相談をして冷静に全体を考え判断を行いたいですね。
そのためには「バランス感覚」を意識することが大切です。