April 2, 2009

「手軽」と「高級」

あるブランドの店舗設計で、
「キレイに商品をディスプレイするとお客様が
手に商品を取って見てもらえない、でもキレイなお店を創りたい」
という要望がありました。

この気持ちは個人的によく分かります。
なぜなら、私がそういうタイプだからです。
洋服などを買うとき、すごくキレイに畳んでディスプレイされていると、
躊躇してしまうことがあります。「ちょっといいかも」と一瞬思っても、
手に取る動作まではいかずに結局そのまま通り過ぎてしまう。
「今日は絶対お目当ての物を買うぞ!」と意気込んでいる日であれば別ですが、
ちらっと立ち寄ったお店なんかでは、「まあ、いいや」と思いがちです。

これっていわば、購買欲を阻害しているわけです。
ただでさえ財布の紐がきつく締まっているご時世ですから、
購買欲を阻害する要素は可能な限り取り除いてあげなければなりません。
物販店を設計する以上、少しでも多く売れるお店を設計することは、
ひとつ大きな努めです。

そもそも店舗などの商業空間のディスプレイデザインとは、
販売促進を目的とした演出です。
アートのような作り込まれたショーウィンドーをデザインするのも、
大きく「大安売り」と書かれたPOPを貼るのも、
結果として販売促進に繋がれば、それはディスプレイデザインです。

ディスプレイデザインをする上で、重要になってくるのは「距離」だと思います。
どの視点で見るのかでデザインは大きく変わってきます。
100m先から見るものか、手元50cmで見るものかで、
デザインは大きく変わってきます。
難しいのは設定する距離が無数にある場合のデザインです。
大きな店舗では、距離によってディスプレイを要所要所に設けることができますが、
小さな店舗では面積が限られているのでそれができません。

ただ距離ごとにデザインを起こして、それらがうまく融合することができれば、
小さな店舗にしかできないディスプレイデザインが可能になってくると思います。

そう考えていけば、「手軽」と「高級」は正反対の言葉ではないわけですので、
両者を兼ね備えた店舗デザインも可能になると思います。