今年は越後妻有アートトリエンナーレ2009が開催されます。
私が友人達とLUXという名で参加したのが2000年でしたので、今年で3回目です。
トリエンナーレでは、現代アート作品を鑑賞しながら美しい自然を体験できます。
屋外の美術館と思って参加してみると楽しい夏のイベントになると思います。
遠いですが・・・。
残念なのは、発表した「
Scaping Objects」という作品は、
もう見ることができません。
美しい自然の保存を考え、意図的に作品が残らないものとしたためです。
記録は2000年9月号の美術手帖等の雑誌媒体にいくつか掲載されています。
アートというより、建築・ランドスケープとして考えた作品です。
環境に対する距離のとりかたについて自分の考えを具現化した作品でした。
ブログ内で記録を残しておくことにします。
「Scaping Objects」(顕現するオブジェクト)
このプロジェクトは水、光、風といった農耕文化において重要な環境の情報を、
隣接する水田を反復した苗に模した棒状のオブジェクトで顕在化(けんざいか)し、
それらの設置・回収を通し農耕のプロセスをこの地のランドスケープとして
再提示するものです。
日中、ため池の水質により試験管内のPH試験紙は青や赤に色が変化します。
オブジェクトは、試験管と蓄光塗料を塗布したPH試験紙、浮きとなるポリ容器、
おもり、ゴム、竹、釣り糸により作られています。
また夜間は昼間の太陽光を蓄光して発光します。また風によりゆらゆらと動きます。
田植えと同じように、ため池に入りおもり付きの浮きをグリット状に並べ、
PH試験紙を丸めていれた試験管をその浮きにひとつひとつ植えていきます。
主催者側から支給される費用で製作したのは、階段のみです。
田畑とため池まで降りることのできる階段の道を斜面脇につくりました。
この階段が唯一、この場所に常設的に設置した構築物です。
*以下補足(記録作品集用に提出したコンセプト文より一部抜粋)
SITE/計画の条件:
新潟県松代町の松代エリアは越後妻有アートネックレス整備事業の一環として
雪国農耕文化という地域イメージを発信することがあらかじめ決定していた。
敷地となる水田用のため池は、河川沿いの土手に平行して連続する
水田の最後に位置し、その連続性を分断していた。
ため池は周囲の植生(水田の稲、樹木、土手の草)の緑色とは対照的に、
黄褐色を呈しており、ため池に水を誘導するためのホースや農作業の道具、
ゴミ等が放置されていた。
以上の条件から水田の連続性を保持させ、ため池の乱雑さを整備し、農耕文化を
暗示させるというプロジェクトの方向性が決定された。
READING/読み取り:
このため池はこの地のランドスケープとして重要なVOID/ボイドとなっている。
周囲の環境がてつかずのままの自然か人工的に整備された自然という点で
我々がそこに新たに何か付加したり挿入する余地があまり残されていないのに対し、
ため池は農耕における水量調節という機能を満たしているだけで放置されており、
その乱雑さが余地の大きいこと、つまり場の潜在性の高いことを示していた。
そのことで周囲の環境とは異なる文脈をもっていた。
そこでこのため池のVOID(潜在性)を保持しつつその場の情報を表出させるため、
ため池に挿入するオブジェクトはそこにある環境の情報から、
何か形態が発生してくるようなものであるべきだと考えるようになった。
»「越後妻有アートトリエンナーレ2000」その1